女性と歯周病
男女のホルモンの違い
女性には男性とは異なった遺伝的背景やホルモンの相違があり、ある種の歯周病は女性に多く現れます。
◆女性ホルモンの影響
左の写真:ちょうど思春期と重なり、炎症性病変が特徴的にあらわれている
右の写真:歯間乳頭部に腫瘍様の腫脹がみられる
思春期や妊娠期、および月経時にしばしばみられる歯肉の著しい炎症症状や歯肉の増殖性変化は、血液循環中の女性ホルモンの濃度が上昇し、歯肉溝に到達することで誘発されます。
同じことは、経口避妊薬を用いている女性、ステロイドホルモン、エストロゲン、プロゲステロン誘導体を含む薬剤を使用している患者にもみられ、動物実験でも裏付けられています。
骨組織の密度が低下して骨に髭が入ったようになり、骨折し易くなる状態を骨粗髭症といい、閉経期以降の女性に多くみられます。
骨粗髭症は歯槽骨にもみられ、抜歯後の歯槽堤の吸収は、骨粗髭の度合いがひどいほど速く重度になる傾向があります。
これに喫煙の要因が加わるとさらに促進されます。
骨粗髭症を防ぐには
・カルシユウムの摂取を心掛ける
・日光浴をしてビタミンDの摂取を心掛ける
・1日8′000歩程度を目標にしたウオーキング
・アルコール、コーヒーは少なめに
・喫煙者は禁煙する
女性の口腔ケア12か条
口は消化器官の入り口であり、咀嚼、会話に大切であるばかりでなく、愛情を表現し、人間の喜び、悲しみ、怒り、幸せをあらわすところです。口腔の健康を守ることは、からだの健康を維持・増進させることであり、よく噛めることはさまざまな病気の予防にもつながります。
女性の生涯を通して適切で十分な口腔のケアをすることは、生命の質、生活の質(QOL)にとって重要なことで、それは美しきを保つことでもあるのですもだからこそ、口腔はどのような犠牲を払っても治療とケアをおこなう価値があります。
生命の質、生活の質(qOL)を向上させるために
1.オーラルケアの基本は、プラーク・コントロール
むし歯も歯周病もプラーク(バイオフィルム)による感染症です。したがって、毎日の歯ブラシやフロス、歯間ブラシによる清掃と歯科医院での定期的なクリーニングによってプラークを機械的に取りのぞき、口の中の環境をととのえることが、オーラルケアの基本となるのです。
2.バランスのとれた食事を楽しい雰周気でよく噛んで
日本人にとくに不足しがちなカルシウムを含む食物を意識して摂取しましょう。甘い食物は食後にデザートとして適切な量を食べるなど、食べ方を工夫してください。
3.女性の生涯には、病気の感受性の高くなる時期があることを理解する
女性は、生涯を通して男性よりも性ホルモンの影響を大きく受けます。節目の時期(初潮、妊娠期、更年期など)には、とくに注意してください。
4.むし歯や歯周病に自分がどれだけかかりやすいか(リスク)を知る
むし歯も歯周病も、個人によって羅病性(かかりやすさ)に差があります。自分のリスク (危険因子)をよく把握し、適切に対処しましょう。
5.タバコは毒の缶詰です。タバコを吸っている方は、ぜひ禁煙を!
タバコは多くの病気の発症と進行にかかわっています。とくに、歯周病にとってタバコは最大の危険因子です。肺がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がんのリスクは非喫煙者の何倍にもなります。
6.骨粗怒症予防のために、無理なダイエットはやめましよう
女性に多い骨粗餐症を予防するため、若い時期から骨の密度の増強・維持に心がけましよう。定期的に適度な有酸素運動をおこなうことが効果的です。無理なダイエットはしないようにしましょう。
7.「歯ぎしり」と「くいしぼり」に注意!
歯ぎしりとくいしばりは、本人が自覚しないでおこなっている習癖です。歯ぎしりやくいしばりをしている徴候に気づいたら、回避するように心がけてください。
8.歯髄(神経)を取ってかぶせものをした歯がたくさんある人、、
固いものをよく噛んで食べることは歯の健康のためによいことですが、歯髄(神経)を取ってかぶせものをした歯がたくさんある人は、歯根の破折に注意しましょう。
歯髄(神経)はできるだけとらない治療が理想ですが、止むを得ず抜髄、根管治療がされた歯は、残念ですがその寿命は短くなってしまいます。自分の歯をできるだけ長く使うために、固いものを噛むときには歯を破折しないように注意してください。
9.フッ素入り歯磨剤やキシリトールガムなどをかしこく利用
フツ化物入りの歯磨剤やフツ化物製剤は、むし歯のリスクの高い患者さんが利用すると、とくに効果的です。また、中高年になると歯肉が下がって歯根が露出してきますが、この部分はむし歯になりやすいので、フツ化物入りの歯磨剤をぜひ使ってください。
10.自分が服用している薬剤について、十分な知識をもちましよう
中高年になると生活習慣病で通院し、多くの薬剤を服用している人が増えます。薬剤には、唾液の分泌を低下させたり歯肉の増殖をもたらしたりなど、口の中にさまざまな副作用を及ぼすものがたくさんありますので、自分の飲んでいる薬の性質(とくにその副作用)をよく知ることが大切です。
11.高齢者の誤囁性肺炎に注意しましょう
要介護者や高齢者の死因で最も多いのが老人性肺炎です。その原因菌は口の中に存在し、寝ている間の誤境によって呼吸器に入りますので、高齢者では就寝前の口の清掃がとくに重要です。
12.信頼できるかかりつけ歯科医院を決め、定期的にメインテナンスを受ける
自分の歯にまさるものはありません。そのためには、日常の手入れと歯科医院での定期的なメインテナンスが大切です。これからの時代は病気になってから通院するのではなく、健康を生涯にわたって維持・増進していくために歯科医院を利用したいものです。
女性のためのオーラルケア 石井正敏 著 より